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 小児サーベイランス事業

   

●小児サーベイランス事業

平成18年度会員診療所拠点調査、小児(4歳,5歳児)

 平成18年7月から9月にかけて浜松市歯科医師会の会員診療所に来院した4歳、5歳児の保護者にアンケート調査をおこない、その後お口の中の様子を検査して調査しました。
 浜松市の4歳、5歳児の家族構成などの環境因子や歯みがきの方法などとむし歯の関係や、保護者の歯に対する知識や意識の調査をおこないました。
 有効回答数は349でした。


◇ 卒乳が遅くなっている

 1997年では卒乳平均13.3ヶ月、2,006年は卒乳平均17.0ヶ月で遅くなった。

 1997年では、89%が1歳半までに卒乳していたが、2006年では62.4%が卒乳し、2歳過ぎの卒乳が14%であった。

 厚労省は1歳の断乳目標を改定して、1歳3ヶ月ごろを目安に、遅くても1歳半までには離乳完了することを指導目標にした。それに合わせ離乳開始も5ヵ月よりWHOと合わせ6カ月にする方針との新聞報道もある(2006.10.12朝日)また産科では母子分離から母子同伴となり、産後すぐに赤ちゃんをお母さんの横に寝かせ、おっぱいを吸わせるようになってきた。そして母乳は欲しいとき欲しいだけ吸わせなさいという指導が増えてきた。

 母乳だけではむし歯になりにくいが、1歳6ヶ月歯科検診で、むし歯がある子どもが約3%いる。そのうちの一部にお砂糖の入っている飲食物をあげていないのに、むし歯ができている。その理由が夜中の頻繁な母乳保育である。夜中のだらだら飲みだけは注意すべきである。


◇ 飲み物はお茶・水が増え、スポーツ飲料も増えている


 1993年、13年前のデータは浜松市内の年中、年長の園児753名の調査でした。今回の調査ではお茶・水が増え、多少牛乳が減少した。

 またスポーツ飲料が少し増加している。

 飲み物はカロリーのないお茶や水がよいという指導が行き届いてきた一方、脱水防止のためイオン飲料が勧められようになってきた。高熱や激しい運動のとき以外にもスポーツ飲料が日常的にも飲まれる傾向がみられる。

 スポーツ飲料には砂糖が多いものがあり、小児科と小児歯科の専門家の委員会では次のように考えている。

 (乳幼児の場合)過度の運動のとき以外には水にする、イオン飲料を水代わりにしない、下痢か嘔吐でイオン飲料を飲ませたとき症状が軽減したら中止する、寝る前には与えなく水にする、入浴後は水にする、寝る前には歯を磨く、寝ながらのときは水にする。


 (学童の場合)運動で汗をかくときは薄めて飲む、運動を終わったら水にする、ペットボトルでいつも飲む習慣や食事のときに飲む習慣をつけない、のどが渇いたときは水を飲む。


◇ おやつの時間を決めるようになってきた

 おやつの与え方に関して、 13年前に比較し、保護者が適時だいたい決めて与えていたのが減少し、時間をしっかり決めてあげるようになってきた。

 しかし間食の時間を決めなくて子どもが欲しがるとき勝手に飲食する比率は約16〜17%であり、13年前と変わっていない。その結果、相変わらず生活のリズムが不規則でむし歯のリスクが高い子どもがいる。総体的にはむし歯は減少しているが、むし歯が比較的少ない子どもと極端にむし歯が多い子どもの二極化が進んでいる。


◇ 毎日仕上げ磨きをする家庭が増加

 10年前に比べ毎日仕上げ磨きをする家庭が増えたことはむし歯減少の要因のひとつであり、口腔保健意識の向上がうかがえる。

 歯科医院での歯磨き指導や園学校での歯科検診の実施、各種媒体を利用してのプラークコントロールなどの歯科保健啓蒙の成果であろうか。

※参考
歯の汚れのことをプラークまたは歯垢という。顕微鏡で観察すると、うようよ動く菌の塊であることがわかる。べたべたした歯垢はうがいや洗口薬ではとれないので、歯ブラシで機械的に除去しなければならない。大人でも難しい歯磨き、子どもではまだ歯垢を除去することは困難である。
小学校3〜4年生ぐらいまでは仕上げ磨きが必要である


◇ むし歯予防は仕上げ磨きだけでは限界がある

 1997年当時、毎日仕上げ磨きをしている方がむし歯は少なかった。つまりむし歯と仕上げ磨きは関連が高かった。

 2006年では仕上げ磨きとむし歯の本数とは関係がなかった。
これは親の関心度の高まりや砂糖が含まれない間食食品への変化が関係していると考えられる。

※参考資料
2005年度浜松市全体の4,5歳児のむし歯有病者率は40〜50%であり、一人当たりのむし歯の本数は1.7〜2.3本である。静岡県全体の調査よりよりわずかに少ない傾向にある。
今回の調査では、歯科医院受診の園児のむし歯治療は相変わらず多く、4,5歳児の平均むし歯経験歯数は4.5本である。これは奥歯の歯と歯の間のむし歯治療が多い。
仕上げ磨きをしていても歯と歯の間には歯ブラシの毛先が入らないため、歯と歯の間のむし歯はあまり減少していない。その予防には糸ようじ(デンタルフロス)が最適であるが、今回の調査でデンタルフロスを毎日使う人は6%なのでデンタルフロスの使用を進めていく必要がある。


◇ 口の中がきれいになってきた

 口の中の清掃状態は9年前と比べて、悪いが有意に減少して、総体的に少しよくなっていることがわかる。

 口の中の関心が高くなってきたものと考えられる。

 歯科医療関係者の歯科保健啓蒙活動の成果もあるが、少子化で、子育てに力を注ぎ、とくに教育や健康に関してより熱心になっできたことが関係しているのではなかろうか。


◇ 子どもの歯のすき間がない子が増えている

 乳歯では、前歯の歯と歯にすき間が空いている方が望ましい。1997年に比べて上下ともすき間が減少している。

 歯並びは遺伝的要因が一番大きいが、そのほか指しゃぶりや頬杖、口呼吸などの生活習慣も影響する。食べ物が柔らかいと咬む必要性が少なく顎が発達しないという可能性もあるが、定かではない。今回の調査では顎が小さくなっているのか、歯が大きくなっているのか不明であるが、すき間が少ないことにより、将来萌出してくる永久歯がきれいに並ぶ確率が低いことは確かである。

 5歳で歯と歯の間にすき間がない子どもは、間違いなく永久歯はデコボコが生じる。今回の調査で少なくても40%の子どもは、永久歯の歯並びに何らかの問題がでてくるということである。


◇ 下の子ほどむし歯が多い傾向

 1997年と比べると2006年ではいずれもむし歯が少なくなっている。第1子〜第4子の間では大部分の第1子・2子間では差がないが、少数であるが第3子目はややむし歯が多くなる傾向にあった。

 その理由として下の子は低年齢の早い時期から上の子達と同じ甘い飲み物やお菓子を食べること、そして家族が多くなり、一人の子に対して世話をする時間が短くなり、規律ある生活が流されてしまうことが考えられる。


◇ 口の中がきれいならむし歯も少ない

 汚れの多い子どもほど歯肉炎が明らかに多くなっていた。口腔清掃状態がよければ、当然むし歯も歯肉炎も少ない。

 口腔内の清掃はむし歯は勿論歯肉炎の予防にもなる。歯ブラシは歯と歯肉もみがくように心がける必要がある。


◇ 大家族の方がむし歯が多い傾向にある

 10年以上前の調査でも、大家族の方がむし歯が多い傾向がみられた。それも祖父母の同居が原因であるという結果であった。今回の調査でも第一子において、核家族より複合家族の方が有意の差を持ってむし歯が多かった。

 可愛い孫においしいお菓子をあげて喜ばせたいのであろうが、母親もそれを断りきれないところに複合家族の問題がある。

 父親も参加しておやつの与え方は家族で話し合うべきである。


◇ 仕上げ磨きをしないと歯肉炎になりやすい

 むし歯予防のためだけでなく、将来の歯周病予防のため、仕上げ磨きは必要である。

 歯肉炎は園児の3割に見られる。今回の調査で仕上げ磨きをしていない場合、歯肉炎は8割近くみられる。少なくとも小学校4年生ぐらいまでは仕上げ磨きをしてほしい。

※参考資料
 成人の8割近くの方が歯周病(歯肉炎および歯周炎)に罹患していると言われている。歯肉炎は歯肉に限局した炎症で丁寧な歯磨きで炎症を取り除き、元の健康な歯肉にもどすことができる。しかし、歯周炎は歯肉だけでなく骨を含めた歯の周りの組織が破壊される疾患であり、炎症がおさまっても元にはもどらない。歯肉炎が進行して歯周炎になることが多いと考えられており、60歳以上では年間1本歯周病のため歯を失っている。


◇ キシリトールのむし歯予防効果は知られている

 今回の調査でキシリトールのむし歯予防効果は7割が知っている。今後さらに代用甘味料は増加すると思われる。しかし、味覚形成の上からは積極的に勧める事は疑問である。
歯科保健の観点からは砂糖含有飲食物のメリハリをつけた食べ方の指導が大切である。キシリトールはむし歯にならないとか、むし歯予防によいという単純な説明ではなく、あめやガムを減らせない子どもに関して、歯科からキシリトールの利用の仕方について、きめ細かい助言が必要である。

※参考
 9年前、浜松市における園児を持つ母親の調査において、キシリトールを知っていた母親は74%いた。しかし、その時の45〜55才成人の調査では24%がキシリトールを知っていたに過ぎない。


◇ デンタルフロスはまだあまり使われていない

 日本ではまだデンタルフロスは一般的ではない。毎日使用が6%である。今後むし歯の治療は奥歯の溝から歯と歯の間が中心になると思われます。その予防のためにはデンタルフロスしかないことを啓蒙していく必要がある。

 歯科医院を受診している子どもが調査対象なので、すでに歯と歯の間にむし歯があり、治療しているものと思われる。治療後、歯と歯の間のむし歯予防のためデンタルフロスを勧められ、使用するようになったケースが多いのではないか。

 したがってフロスの使用有無とむし歯の本数との関連はみられていない。今後経過観察をしていけば、フロスを使用している方がむし歯の増加は少ないことが期待される


◇ フッ素入り歯磨き剤を選んで使っている

 13年前の1993年の調査ではフッ素の予防効果は40%がわからない、9%が効果がないと思うと回答している。残り51%の園児の母親はフッ素の予防効果を期待していた。またフッ素の希望はおよそ70%であった。

 今回は同じ質問ではないため比較できないが、確実にフッ素に対する関心が高まってきている。

 厚労省や日歯、県歯、口腔衛生学会のフッ化物応用に対する積極的な推奨により、歯磨剤もほとんどフッ化物配合になってきた。

 健康はままつ21の指標は歯磨剤を使う人が平成18年で50%、22年で70%である。歯科医院受診の子どもでではすでにフッ素入り歯磨剤使用は70%を達成している。


◇ フッ素塗布はほとんど受けている

 歯科医院を受診している子どもはほとんどフッ素塗布を受けている。
WHO、厚労省、歯科医師会、歯科医学会、歯科医院などのフッ素に対する情報提供が市民に浸透してきたのではなかろうか。のみならず社会が関心をもってきたことを示している。

※参考資料
 健康はままつ21では、フッ素塗布を受ける子どもの数を平成18年50%、平成22年には60%を目標にしている。今回は調査対象が歯科医院へ受診しいている子どもなので当然フッ素塗布経験者は多い。


◇ 水道水のフッ化物応用はあまり知られていない

 フッ素塗布やフッ素入り歯磨き剤は8割以上知っているが、水道水のフッ素化を知っている人は2割以下である。

 フッ化物応用で効果がある順位は水道水のフッ素化、ついでフッ化物洗口である。詳細な部分で歯科関係者の情報提供がまだまだ不足している。


◇ シーラントを受けた子どもは半分以下である

 シーラントとは奥歯の溝をフッ素入りのプラスッチック樹脂で流し込み塞ぐ方法である。汚れも入り込みにくく、歯の質も強くすることができる。

 フッ化物応用とシーラントはむし歯予防効果が科学的根拠をもって認められている。まだシーラントを知らない人が27%いて、シーラントの経験している子どもは37%である。シーラント処置は初期のむし歯なら健康保険が利用できるので正しい情報を提供していく必要がある。


◇ むし歯菌がうつることはよく知っている

 むし歯菌、すなわちミュータンス連鎖球菌は養育者から唾液を介して子どもにうつり、定着することはかなり知られるようになった。浜松市歯科医師会では「うつるんですむし歯菌」というリーフレットを作成し啓蒙している。

 歯が萌出すると定着するので、1歳過ぎから2歳半ぐらいまでの時期が重要である。養育者の口の中をきれいにしておくことと食器の共有は注意する必要がある。



◇ 炭酸飲料やスポーツ飲料はむし歯になりやすい

 お茶や水に比べて、炭酸飲料やスポーツ飲料をよく飲む子どもの方がむし歯が多い傾向にある。喉が渇いたときは、カロリーのないお茶や水にして、脱水や激しい運動のときのみ、スポーツ飲料を飲むようにして欲しい。

 またジュースや炭酸飲料などの砂糖含有飲料を飲む場合は、楽しみとして1日コップ一杯と決め、だらだら飲まないようにして欲しい。


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